変形敷地を利用してコンサートホール
敷地の形状に素直に建てた?波間から突きだした船の舳先のよう 住宅プロデュース会社・ベースメントがプロデュースした江古田の家を拝見しました。プロデューサーの朝妻義征さんからメールをいただいて、かなりの変形敷地とは聞いていましたが、聞くと見るでは大違い。前面道路も狭いし、まわりも密集した住宅地とあって、ここに建てるのは建築家の知恵と技以外にありえないと思わせるような条件の悪さです。 敷地は☆印を半分に割ったような形状ですが、建物はどうやらこれに沿うような恰好で素直にデザインされたようです。それはまるで波間から突きだした船の舳先を見るかのよう。これはユニークな室内空間が期待できそうですね。 エントランスを入ると、右手に中庭に面した居心地のよさそうな個室。ここはお母さんの部屋とのことです。前面が中庭ですから採光は十分、あたたかみの感じられる空間になっています。
エントランスからまっすぐ進むと左手にキッチン。その奥は通路になっていて、どこかに出られるような印象です。キッチンに寄らずさらにまっすぐ行くと、広々としたリビング+ダイニングに出ました。キッチン奥の通路は、この大リビングに通じていたわけです。
屈折した廊下に生まれたキッチン、収納の上は階段
メインホールともいえるリビング兼ダイニング、右手は中庭 この大リビングはすごい!の一言。先に行くほどすぼまっていく三角形に近いスペースは、まるでコンサートホールか教会のよう。真っ白な壁とガラスの開口部に挟まれた空間は、すこしおごそかな雰囲気すら感じられます。聞けばここは、アーティスト家族のための家だとか。この空間なら、クラシックのミニコンサートを開くもよし、巨大な壁面を利用して仮設ギャラリーにしてもよし、です。
階段途中からの見おろし
白木の天井が美しい
2階に並ぶ“不揃いの林檎”たち
キッチンとこの大空間を隔てている壁はじつは階段の裏。限られたスペースを機能的な要素に組み入れてじつに有効に使っているわけですね(これがほんとの裏技?)。この階段を使って2階に上がると、こちらはプライベートな生活空間ということで、4つの個室とバスルームが“不揃いの林檎(スモールアップル)”のように並んでいます。
最初のスモールアップルは和の空間、障子を開くとホールと繋がる とくに最初のスモールアップルは、1階の大リビングに突き出すような形であり、障子を開くとリビング全体が見渡せるようになっています。しかもこの窓は全部開放できるため、こことリビングは一繋がりの空間でもあるといえる。いわゆる物見台のような恰好で、コンサートの時にはきっとVIP席になるはずです。いいですよねー。
バスルームを含む4つのアップルを結ぶツリーのような廊下 他の3つのアップルは、不規則に曲がりくねったツリーのような廊下の左右に振り分けて配置されていますが、この廊下に立つと、なぜか子どもの頃によく行った遊園地のマジックハウスを思い出してしまいます。角ごとに鏡が置かれていて、位置関係がわからなくなってしまう遊び場施設ですね。ちょっとだけ迷路に迷い込んだような空間、きっと住んでいて飽きが来ないことでしょう。
変形敷地が住宅建築をおもしろくする
第二のアップルは中庭に面して
ベランダがある
ベランダから中庭を通して
ホールを見る これは敷地の形状に合わせて空間を割り振ったということでしょうが、もちろん漠然とそうしたわけではなく、作り手のきちんとした計算と設計意図が読みとれます。第二のアップルは中庭に面したベランダのある部屋、続いて水回りを挟んで道路側に2つの個室が並んでいますが、いずれも形も大きさも不揃い。使い勝手よりも、アクティブに住むことの楽しさを優先させたことがわかります。
目隠しルーバーの付けられた道路側のアップル このおもしろさは、この敷地でなければけっして得られなかったもの。そう考えると、最初は絶望的と思われた変形敷地が俄然、住宅建築をおもしろくする重要な要素のように思えてきます。こうした変形敷地はまだまだ都内にたくさん残っているはず。建築家たちの知恵と技と意欲で、そうした土地を最高の形で甦らせていってほしいものです。 ■設計監理:archi+air/古谷清寿、二瓶渉
■施工 :ティエイチモリオカ
■プロデュース:ベースメント ●敷地面積:137.62m2
●延床面積:137.06m2
●構 造 :木造(一部鉄骨)・地上2階建て
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