---都心のわが家は身の丈サイズ。
建築家の長洲研志さんは、住むなら生まれ育った都心がいいと都心にこだわって土地を探し西麻布に自邸を建ててしまった人です。長洲さんのご家族は奥さんとダルメシアンのダン(3歳)。長洲邸はこの夫婦+1頭が都心でできるだけ快適に楽しく暮らせることをめざした家です。
工事現場によく張ってある
メッシュシートに覆われた長洲邸
「道路面から一段高くなった造成地ということで、なかなか買い手が見つからなかったことが幸いしました。だけどすでに土地値だけで予算オーバーでしたから、あとは『自分たちでできることはやろう』ということにして、分離発注というやり方で建てることにしたんです」と長洲さん。
材料費と人件費を抑えるために、かかわる業者は鉄骨とRCの専門会社とサッシ&ガラスの業者、それに電気屋さんだけに絞り、内装は構造むき出し、ガラスをそのまま外壁とする大胆な工法を取りました。だから長洲邸は全面がガラス張り、外からの視線を遮るために家全体をメッシュシートで覆っているわけです。
中を見せていただくと、これが思った以上に広い! ガラス面が多いため全体的に解放感があるのは当然ですが、地上3階地下2階という計5層になった縦の広がりがイメージとしての広さをことさら強く印象づけています。
玄関から階段室にいたる廊下を望む。落ち着いた暗さの地下の多目的ルーム。ギャラリーとして貸し出している
玄関は地下1階、これは盛り土になっていた造成地を掘ったため、ほぼ道路面にありながら地下扱いになったということですね。入ってすぐ廊下があり、左側が鉄骨の業者につくってもらったという靴箱、右側は長洲さんが自分で塗りタイルを貼った手づくりのバスルームになっています。
廊下のどん詰まりは階段スペース、地下2階と1階に行ける階段があります。地下は多目的スペースで、ギャラリーとして1日~1週間単位で貸し出しを行っているとか。玄関スペースまで吹き抜けになっていて、広さが約12畳あり落ち着きのあるここは、オブジェや陶芸作品などの展示会にはもってこいかもしれませんね。
空中にダイニングキッチン(2階)が浮かぶリビングさて1階に上がると、そこは吹き抜けのある広いリビング。エキスパンドメタルの階段を上がって3階に行く途中にダイニングキッチンが設けられています。つまりダイニングキッチンは、吹き抜けのあるリビングの空中に浮かんでいる2階ということでしょうか。これは都心の狭小地では縦の広がりを利用するしかないという制約をみごとに逆手に取った手法といえそうです。
ダンくんはリビングの床の滑るタイルが苦手「外壁はすべてガラスですから開放感は抜群。奥まった土地なので周囲の視線も気になりません。夏は暑いんじゃないかと言われますが、窓を開ければ風が通ってかなり涼しい。また、リビングと3階の寝室、それに地下のギャラリーは床暖房になってますからエアコンと合わせて使えば、冬場も心配いりませんよ」(長洲さん) 目隠し用に建物全体に張りめぐらされたメッシュシートを通して入ってくる光はとても柔らかく目にやさしい。大都会の真ん中にあってしっかりプライバシーが守られていることも、安心感を感じさせてくれます。愛犬のダルメシアンのダンくんは、もっぱら屋上にある犬舎で過ごしていますが暑い日やとくに寒い日などはここに降りてきて、くつろぐこともあるそうです。
ダイニングからリビングを望む。3階の寝室兼SOHOダイニングキッチンの上部にある3階はご主人のSOHOを兼ねた寝室。さらに上がると芝生を敷き詰めた屋上庭園があります。そしてここには愛犬のダンくんの犬舎もある。西洋芝とクローバーが植えられじつに気持ちいい! 開放的でいつも日光の当たる犬舎と緑豊かな庭園は、犬にとっても快適そのものでしょう。
西洋芝とクローバーの屋上庭園。ここはダンくんの居場所、夜には都心の灯りが一望 できる
最近はもっぱら室内飼いの小型犬が多いわけですが、本来ダルメシアンは番犬であり狩猟犬。自然環境の中で自由に暮らすのが向いていることはいうまでもありません。気持ちいい天気の日などは、長洲さん夫婦はここでダンくんとの時間をゆっくりと過ごしてあげるそうです。
「屋上庭園の機能はそれだけではありません。ローコストのためデッキプレートを天井がわりにしたこの家では、屋上に張りめぐらされた芝が断熱材の働きをしてるんです。屋上緑化はこれからの都市住宅にはおすすめ。土は夏は日射しを和らげてくれますし、冬は蓄熱するという特性がありますから。今度ここに露天風呂をつくる計画もあるんですよ」(長洲さん)
「ここは僕のお城」と自慢げなダン君
長洲さんは言います。「ここから一望する東京の眺めは格別。夜景を見ながらビールなどを楽しんでいると、ああここは都心なんだなあとあらためて満足感が広がってきます。手づくりのローコスト住宅で不便な点もありますが、家という箱を楽しむのではなくこの地に住んで日々の生活を楽しむことを大切にしたいと思えば何ということもない。まあここからいかに内装をいじくってやろうかという楽しみもありますし、とにかくいまは不便で楽しくて仕方ないという感じです」 ■設計・監理:長洲研志(ICD建築設計事務所)
●敷地面積 :50.01m2
●建築面積 :30m2
●延床面積 :119m2
●構 造 :鉄骨造+RC造 地上3階地下2階建て
●建築費 :約2000万円
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