能登半島地震から1週間後、積水ハウスが発表

戸建ての地震対策トレンドは「建物への地震エネルギーをいかに減らして変形量を抑えるか」(写真は、積水ハウスの新システム「シーカス」の戸建て設置例)3月の能登半島沖地震(震度6強)、4月には三重北部でも震度5強の地震が続き、阪神大震災(1995年、震度7)、新潟県中越地震(2004年、震度7)以来、数十年に一度と言われた激甚地震の発生頻度の間隔が確実に縮まっています。しかも、ほとんどが建築基準法の基準を上回る大きさです。こうした中、一戸建て業界でも次々と独自の地震対策システムを開発。「地震に耐えうる家」から「人命はもちろん、家の変形を最小限にとどめる家」「地震エネルギーをコントロールしてしまう家」へと、熱い進化合戦が繰り広げられています。積水ハウスは能登半島地震から1週間後の4月初め、「地震にブレーキをかける家」というコンセプトで、「耐震構造」「制震構造」を併せて採用した独自の地震動エネルギー吸収システム「シーカス(SHEQAS)」を発表。建物の揺れにブレーキをかける特殊ダンパーをK型に組み込んだ「シーカスフレーム」を、耐震構造である耐力壁の中に組み込むという、いわば「耐震構造+制震構造」の二重のブロック構造です。
業界初、2つの大臣認定を同時に取得

地震でフレームが変形すると、内蔵された特殊高減衰ゴムが連動して、地震の動エネルギーを熱エネルギーに変換するしくみ軽量鉄骨軸組の「シーカスフレーム」には、粘弾性ダンパーが組み込まれており、このダンパー内にある特殊減衰ゴムが、地震エネルギーを熱エネルギーに変換して大気中に放散。この「シーカスフレーム」を耐力壁の一部に組み込むことで、震度7クラスの地震にも十分なブレーキがかかり、建物変形量を約半分におさえるとともに、住宅の内外装への被害も最小限におさえるとしています。注目すべきは、このシステムが、建築基準法「構造方法等の認定」と、品確法「特別評価方法認定」という2つの国土交通大臣認定を取得している点。同社によると、粘弾性制震システムでは業界初。もちろん、住宅性能表示制度で最高の耐震等級「3」(数百年に一度、きわめて稀に発生する地震に耐え得る耐震性能)も標準でクリアしています。

制震システムを標準搭載し発売された鉄骨2階建て商品「イズオーダー」(写真提供:いずれも積水ハウス)この「シーカス」システムは、4月5日に全国同時発売された2つの新商品「イズオーダー(IS ORDER)」と「ビーエコルド(Be ECORD)」に当面限って搭載。強固な耐震システムを包みながらも、CMキャラクターには俳優の江口洋介を登用し、“家族思いの若いパパ”のイメージを表現した自然体なデザインが特徴です。
ミサワホーム「MGEO」に続き、トレンドは「耐震から制震へ」
ハウスメーカー業界では制震システムをいち早く発表したミサワホームの「MGEO」も、やはり減衰ゴムで振動エネルギーを熱エネルギーに変換するというもの。同社では在来木造リフォーム用制震システム「MGEO-R(エムジオアール)」も発売、「東京都耐震改修工法・装置」にこのほど選定されています。ハウスメーカーの地震対策は「耐震」から「耐震+制震」に進化しているようです。ではでは、工務店の世界でも登場した「業界初の耐震補償付き構造システム」についてご紹介します。日本初、全壊住宅に最高2000万円まで建て替え費補償

設計自由度の高い木造軸組工法に、「金物」と「構造用面材」の強さをプラスしたスーパーストロング構造体住生活グループとトステムのグループ企業21世紀住宅研究所は、「すべての人に、地震に負けない住宅を。」とのコピーで、木造軸組金物工法による日本初の「耐震補償付きスーパーストロング構造体」を昨年発表しました。この「耐震補償のついたスーパーストロング構造体」とは、「スーパーストロング工法」+「耐震等級3相当の耐震設計」+「地盤保証」+「60年継続瑕疵保証」を組み合わせたシステム。地震保険への加入を条件とせず、保険でなく品質保証として建て替え費用を補償する住宅は、同社によると日本初。

軸と面で支えて地震の力を矢印のように逃がすまず「スーパーストロング工法」とは、構造材の接合部に専用金物を使用し、外壁に構造用面材を使用した木造軸組金物壁工法。軸と面で支えるという、いわば「2×4」と「木造軸組」のいいとこ取りをしたモノコック構造が特徴です。この強い構造体に、「地盤保証」と「60年継続瑕疵保証」をプラスすることで、万一、全壊しても最高2000万円まで建て替え費を施主に代わって“肩代わり”してくれるというシステム。保険で集めた資金からの充当でなく、品質保証として同社自身が負担するという点に、同社のスーパーストロング構造体に対する「技術への確信」がみえるといっていいでしょう。
1981年の新耐震基準以降の住宅でも強度不足62%!

工務店で多く使われている柱・梁・土台などの軸組を、精度の高い集成材にして金物で強固に結合(写真提供:21世紀住宅研究所)このシステム開発の背景には、日本の住宅の耐震化率がまだまだ進んでいない現実があります。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の調査によると、耐震強度の基準が厳しくなった1981年以降に完成した住宅約2万4000棟を調べたところ、強度不足は62%と半数以上にのぼったというショッキングな数字も出ています。日本の住宅の7割は工務店が供給しており、「工務店こそが耐震住宅をつくらなければ日本の耐震化率は上がらない、との考えからこのシステムが生まれました」と同社広報。現在、全国のビルダー・工務店を対象に加盟ネットワークが広がっているそうです。ちなみに、同社の「地盤保証」とは、地盤を調査して改良工事することで地盤に起因する不同沈下を保証するシステム。一方の「60年継続瑕疵保証」とは、10年ごとの検査・補修を繰り返すことで最長60年まで継続して瑕疵を保証するシステム。現在、建築基準法により「瑕疵保証」はすべての住宅に対して10年間保証が義務付けられていますが、同社のように差別化の一つとして、独自の保証システムを開発して「安心さ」をアピールする動きが増えていくものと思われます。では、能登半島地震の現地調査をもとに「戸建ての地震対策」を整理してみましょう。
「耐震」「免震」「制震」どう違う?
では最後に、「一戸建ての耐震設計」について頭を整理しておきましょう。地震に強い住宅の構造には主なものとして「耐震構造」「制震構造」「免震構造」があります。一般的に最も普及している言葉は「耐震構造」ですが、業界では「制震構造」「免震構造」が最新の地震対策技術として採用する企業が多く、とくに一戸建てでは「制震」が主流になっているようです。
「耐震構造」は、耐震部材の踏ん張りで地震の揺れに抵抗する構造■耐震構造……耐力壁や耐震部材など、構造部材そのものを地震の力に耐え得る強さにすることで、地震の揺れに踏ん張って抵抗する構造。

「免震構造」は、基礎と建物の間の免震装置で地震の揺れを逃がす構造■免震構造……基礎部分に円盤など特殊な装置を採用することで地震の力を逃がし、揺れが建物に伝わらないようにした構造。ただし、コストが高く地盤の強度などが求められるため、マンションなどで採用されることが多い。

積水ハウスのシーカスに代表される「耐震構造+制震構造」■制震構造……耐震構造である耐力壁などに特殊なダンパー装置などを埋め込み、装置内の減衰ゴムなどで地震エネルギーを熱エネルギーに変換し、地震の力を吸収する構造。
能登半島地震の被害要因が明らかに
独立行政法人・建築研究所の初動調査速報によると、能登半島地震で損傷・倒壊した家屋を目視した結果、建築後かなりの年数が経過した古い住宅における「柱などの腐朽」「壁量不足」「砂地盤」などを被害要因として推定しています。一方、耐震補強工事が行われた公共施設などでは比較的被害が少なかったといいます。また地元の工務店が行った現地調査によると、「住宅を店舗に改装した際に通し柱を継いだり、デザイン重視で本来必要な柱を取り除いた建物で被害が多かった」「築10年以内の比較的新しい住宅では被害は少なかった」という検証も報告されています。住生活基本法に伴う住生活基本計画により、住宅の耐震化率引き上げは政策課題としても取り組まれています。ハウスメーカー・ビルダー・工務店業界でも、こうした「強い構造」に独自の認定取得、補償・保証制度という「長く続く安心」を組み合わせることで、ハード・ソフト両面での地震対策が今後増えていくのではないでしょうか。最後になりましたが、能登半島地震、三重北部地震で被害に遭われた方々の1日も早い復興をお祈り申し上げます。次のスレッド :実例に学ぶ!営業マンを選ぶ決め手...
