近年家庭での醤油の消費は減っているそうです。低迷している原因の一つには、お惣菜などの料理を買って家で食べる中食市場が伸びているのに対して、家庭で煮物等を作る頻度が減っているなど、キッチンが様変わりしていることもあるようです。そんな厳しい状況の中で、国産の丸大豆を原料に、伝統的な製法などにこだわる蔵元 株式会社ヤマヒサ(以後、「ヤマヒサ」)を訪ね、その製法や醤油市場の現状をレポートします。今注目されている醤油に含まれる成分についてのお話は、和食に欠かせない醤油の消費は低迷状態
日本の家庭では醤油の消費量が落ちています。 醤油市場は、近年煮炊き用途の中でもより利便性の高い濃縮つゆや、つけ・かけ用の味付けぽん酢、卵かけごはん用などで支えられているそうですが、生産量の減少はもう30年以上にわたって続いています。またバイオマスエタノールの原料作物に転換する農家が増加し、原料である大豆や・石油高によりコストが増加、さらに原料となる大豆の我が国の自給率はわずか5%という低さで、メーカーを取り巻く環境は厳しいものがあります。そのような理由から、近年では地方の小規模メーカーは、廃業するところも少なくありません。
お醤油は、どんなふうに作られているのか
日本では、現在約1,600社ほどの醤油メーカーがありますが、そのうちの約2割は「脱脂加工大豆」を用いて造っていると言われています。脱脂加工大豆は、大豆を原料に油を搾った時にでる副生産物です。現在の食品表示では、原材料に丸大豆を使用している場合は「大豆」、脱脂加工大豆が使用されている場合は「脱脂加工大豆」と表示されています。丸大豆を使用していれば油脂が多く含まれ、脱脂加工大豆であれば油脂がほとんど残っていないので、風味にも違いが出て来るのではないかと言われています。また脱脂加工する際には薬剤を使います。その薬剤は製造過程で揮発するので問題ないとされ、風味等の点でも化学的な成分分析などでは、どちらも差がないという意見もあります。醸造する際には、伝統的な製法と異なり、酵素剤によって醸造期間を短縮するメーカーもあるそうです。この場合は、製品の表示に「天然」「生」等とは表記できません。またメーカーの中には、一から作らずに醸造までのプロセスを他社に発注して、詰めてラベルを張るプロセスだけを行う会社などもあるそうです。今回は、伝統的な製法を活かしつつ、近代的な機械も組み合わせておられる醤油蔵元「ヤマヒサ」を訪ね、お醤油造りの工程を見学させていただきました。、このページでは、醤油メーカー「ヤマヒサ」さんの工場での醤油造りについて、ご紹介していきます。
国内産丸大豆や杉樽醸造にこだわる「ヤマヒサ」
小豆島にある醤油蔵元「ヤマヒサ」 私が今回お尋ねしたのは、有機・無農薬などの食品を宅配していただいている「関西よつ葉連絡会」で取り扱っているお醤油の蔵元で、醤油の生産地の一つとして名高い小豆島にある「ヤマヒサ」。小豆島では、約400年前から、醤油造りが行われています。小豆島は、当時大豆や小麦などを運ぶ流通の中継点で、また塩の生産地の赤穂も近く、醤油に必要な材料が集約する地だったため生産地として発展しと言われています。けれども小豆島でも、醤油の蔵元は減りつつあるそうです。100年ほど前から醤油造りに取り組んでいる「ヤマヒサ」では、一貫して本物の味を追求しています。国内産の丸大豆と小麦にこだわり、農薬も化学肥科も一切使わないものや、有機JAS認定のものを使っています。塩はメキシコ産の天日製塩法による原塩。日本の塩でも実験的に作ったりされていますが、コストが何十倍にもなり、実用面での難しさがあるそうです。「ヤマヒサ」では、日本の有機JAS認定が実施される以前、20年ほど前から海外の厳しいオーガニック認証を受けているそうです。
醤油造りのプロセス
「ヤマヒサ」さんでは、次のような工程で、お醤油を造っています。
メーカーによって、多少異なりますが、醤油製造の大まかなプロセスとして参考にしてください。
、ここでは醸造のこだわりをご紹介していきます。
こだわりの杉樽醸造
「ヤマヒサ」では、昔ながらの杉樽で、2年ほどかけてもろみをじっくり熟成させます。 近年の醤油造りでは、コストを抑えるために4ケ月から6ケ月かけて醸造するのが一般的になっているそうですが、「ヤマヒサ」では1年半~2年をかけ、伝統的な杉樽で醸造しています。
蔵の外側から杉樽を下から見るとこんな感じです。 長年使い続けている杉樽にも有用な菌がつくことで、発酵がうまく進むのです。家庭でつくるぬかみそのお漬け物が、それぞれの家やぬか床をかき回す人の手に着く菌の影響で漬け物の味が異なるように、杉樽や蔵にすむ菌によって、醤油も味が異なります。人が「造る」といようりも、自然の菌の力によって、発酵食品をいただくことができるのだなと感じられました。
熟成したもろみは、搾った後、火入れ・濾過されて製品になります この杉樽を造る職人さんもほとんどいなくなり、1樽に400万円ほどかかるとか。たった一つでは蔵は成り立ちませんから、杉樽は大切に大切に使われています。「ヤマヒサ」では、コストを抑えるために、一部機械化も導入していますが、あくまで「機械に人がつかわれるのではなく、人が機械を使う」ことにこだわり、例えば発酵の温度や湿度、麹の量等は、蔵人の経験とカンでコントロールされています。
自分が食べたいものを造るこだわり
「ヤマヒサ」さんのモットーは、「醤油づくりにおいては生産者であるが、その他では消費者である」という基本的な考えのもと、自分自身を含め家族にも安心して食べさせることのできるものづくりをすること。大量に作って消費する現代において、食べ物は、自然界からの恵みとは実感しにくく、単なる工業製品になりがちです。誰がどんなふうに造ってくれているのか、また誰が食べているのか、顔の見えにくい希薄な関係に、昨今の食の問題点があると思います。こうした造り手の思いが感じられると、少し高くても大切に感謝して味わいたいと思いました。
「ヤマヒサ」と「関西よつ葉連絡会」が共同開発した醤油。私もいつも使っています。 「ヤマヒサ」の他にも、材料を厳選し、機械化せずに伝統的な製法を守るメーカーもあり、それぞれに個性豊かな製品が作られています。ただ素材を吟味し、伝統的な手間ひまのかかる製法で造った製品派は、その分価格も高くなります。限られた家計の中では、やはり日常的に使える価格も、選択の大切な基準。このようにメーカーがどこにこだわっているのか、どのように価格に反映されているのかを知ることは、安心して使い続けるためにも必要なことだと思います。株式会社ヤマヒサこのレポートの番外編も、私のブログでご紹介しています
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