HDDの容量は年々向上し、ノートパソコンでも100GB以上が一般的になりつつある。ここまで容量が大きくなると、HDDのバックアップはHDDでやるのが手軽だ。
バックアップ対象となる、ユーザー作成のデータや、ソフトの設定情報などはサイズもそれほど大きくないため、HDDにバックアップする必要もなさそうだが、システム全体を丸ごと別のHDDにバックアップしておけば、何らかの異常で起動しなくなっても、比較的簡単に復旧が可能だ。
ノートパソコンの場合、内蔵HDDのバックアップには、外付けの3.5インチHDDを利用するのがコストパフォーマンスも高くおすすめだが、持ち運ぶのは現実的ではない。
バックアップデータも持ち運ぶなら、2.5インチのポータブルHDDを使用するがいいだろう。しかし、容量が100GB~200GB程度と限られるため、バックアップは問題ないだろうが、これに入らない巨大データの保存には向かない。
ノートパソコンを持ち歩き、出先でのバックアップや、内蔵HDDに入らないデータを持ち運ぶ場合、2.5インチのポータブルHDDを使うのが現実的だが、紛失の不安や、常にノートパソコンと一緒に持ち運ばなければならないなど、面倒な点も多い。
また、室内の移動でも、軽く小型とはいえ、余計な周辺機器が一つ増えるだけで、使い勝手がかなり悪くなる。
そこで、ノートパソコン向けのどこでも手軽にデータにアクセス出来る最新環境を考えてみたい。
データの管理が大変
他の人は知らないが、少なくとも私は、CDやDVDなど、どこかにしまっておくようなメディアをどこかに片付けてしまうと、よほどのことがなければ、そのメディアをもう一度使うようなことは無い。
コンピュータのデータも同じで、10年以上前にフロッピーディスクベースで使っていた頃から、一度フロッピーに書き込んで、どこかに片付けてしまったデータを探し出して使うことは滅多になかった。
最近は、ほとんどのデータがHDD内にあり、ネットワーク上から常にアクセスできる状態にしているため、いつでもデータにアクセスできるが、データが多すぎるとその管理も大変だ。
その管理の手間も、iTunesのような音楽データを簡単に管理できるソフトの登場で変わってきた。
MP3のデータを手動でフォルダ管理したい方にはiTunesの使い勝手は不評のようだが、一般的にはたくさんあるCDをコンピュータに取り込み、大量にある曲の中から簡単に目的の曲を見つけられクリック一つで再生できるようになるiTunesのようなソフトは非常に利便性が高いだろう。
音楽やビデオデータの管理はiTunesなどで可能だが、デジタルカメラの画像も、枚数が増えれば増えるほど、管理が大変になる。
デジタルカメラに添付されているソフトでも管理できるが、最近はより高機能なソフトも多数登場している。
例えば、Google Picasa、AdobeのPhotoShop Lightroom、アップルのApertureなど。
これらのソフトはRAW現像機能もついており、バックアップを自動化できるなど、かなり高機能で画像データ版iTunesとも言えるだろう。
一方、コンピュータでは昔から使われているワープロや表計算データの管理ソフトはほとんど無いが、PDFやXHTML形式の電子書籍リーダーAdobe Digital Editionsなどさまざまなソフトが登場しているため、管理の手間も簡単になっていくだろう。
データは管理しやすくなったが、容量が・・・
筆者の例で言えば、昔から使われているテキストデータなどは非常に小さく、 6年分の原稿はHTMLファイルで4MB以下。
毎日数百通届くメールも、1通あたりの容量が小さく、スパムも定期的にまとめて削除しているため、10数年分のメールボックスでも数GB。
WordやExcelファイルも、画像ファイルを多用したり、大企業で全員が毎日大量の新規ファイルを作成しているような環境でもなければ、容量を気にするようなこともないだろう。
しかし、音楽ファイルや映像ファイルなどは、高画質・高音質になればなるほど爆発的にデータ量が増えるため、デスクトップパソコンでもこのデータをどう管理するかは悩むところだ。
例えばCDを500枚(約5000曲)持っている方が、128kbps程度でデータをコンピュータに取り込むと、20~25GB程度の容量となる。
これだけならまだなんとかなるだろうが、デジカメのデータの場合、700~800万画素を最高画質で撮影すると1GBで300枚ほど。毎週50枚撮影したとして、1年で10GB程度のデータになる。
動画は、2時間のSD品質の映画を1Mbps程度のH.264ファイルにしたとして1GB。MPEG2ならこの数倍。HDの場合はさらに数倍になり、少なくともノートパソコンのHDDに保存しておくことは不可能だ。
筆者の環境では、メールや、原稿、細かなデータなどは合計数十GB程度なので、ノートパソコンのHDDに入れておけばなんとかなるが、それに加え以下のファイルも常にアクセスしたい。
128kbpsのAACファイル 約6,000曲分 23GB程度 (本当はロスレスにしたい)
デジカメで撮影した画像 約35,000枚 130GB程度 (年々対数的に増加している)
テレビ番組や放送された映画をApple TVで鑑賞しようと思いH.264化した動画 約850ファイル 約380GB(まだ約3ヶ月分)
動画はともかく、音楽ファイルは比較的小さいため現状でもノートパソコンになんとか入るが、デジカメファイルはなかなか難しい。動画はその時みたい物だけ転送しておくと言うことも出来るが、それも面倒くさい。
現行のデータ量なら、例えば1TBのHDDを搭載したノートパソコンが登場すれば解決するが、それが現実となるだろう数年後には動画やデジカメデータ自体も増えているだろうから、1TB程度では足りないだろう。
そこで、ワイヤレスのブロードバンドもかなり使えるようになってきたし、動画など常にすべて持ち歩く必要もなく、アクセスしたいときに問題なくアクセスできればいいだけのデータは、ネットワーク上にデータを保存しておけば大丈夫だろうということになり、いろいろと実践してみた。
ネットワーク上にデータを保存する
データはいつでもアクセスし、持ち運び時にも素早くアクセスしたい物と、参照できた方がいいが、使いたいときだけ使えればいいデータの二つに分けられるだろう。
個人的には、古いデジタルカメラの画像や、動画がそれとなる。
古い画像はあまり使わないが、アクセスできた方が便利。動画も出先で常に視聴できるわけでもないが、気が向いたら再生出来た方が便利だ。
特にこれらのデータは容量が大きく、持ち運びには問題も多いが、ネットワーク上でアクセスできるようにしておけば、その心配もない。
VPNを使う
そこで活躍するのが、VPNなどのネットワーク技術だ。VPNについての技術的な面は、各専門サイトを参照して欲しいが、例えば、東京の本社と大阪の支店のネットワークを接続したいとき、専用線で接続するのが一般的だが、インターネットを使い仮想的に専用線を構築するのがVPN(Virtual Private Network)だ。
VPNでは、インターネットの回線を仮想的に利用するため、専用線を使うよりコストを劇的に下げることが出来るが、セキュリティなどのリスクもあり企業などでの導入は難しいかもしれないが、個人やSOHOが使うならこんな便利な機能はない。
VPNと言えば、専用のハードが必要だったり、高度なネットワーク知識が必要だったため、敷居も高かったが、最近はSoftEtherやHamachiなど非常に簡単にVPN環境を構築できるソフトが登場し、誰でもVPNを構築できるようになった。
これにより、難しい設定や特殊な機器を購入したり、データセンターにサーバーを設置するようなことをしないでも、パソコン1台と、インターネット常時接続回線(ADSLや光ファイバーなどそこそこ速ければなんでも良い)を用意するだけでネットワーク上に予算の許す範囲でデータ保存領域を構築できる。
SoftEtherやHamachiなどで設定したPC同士は、インターネットに接続し電源が入っていれば、社内や家庭内LANと同じようにいつでもどこでも認識できる。
例えば
ホットスポットなどで接続したノートパソコンから、自宅のパソコンのネットワークにアクセスできるため、自宅と出先でファイルのやりとりが出来るようになる。
古いデジカメ画像や動画ファイルに簡単にアクセスできるようになるし、コピーするのを忘れた当日必要な資料をコピーするようなことも当然ながら可能だ。
ファイルのやりとりが出来るようになるのはもちろん、接続先のパソコンでiTunesを起動し、共有設定をしておけば、外出先のPCで、自宅の音楽ファイルなどを再生することも可能だ。
動画や音楽ファイルをiTunesで管理している場合、iTunesのライブラリ共有機能を使うこともできる。
個人的に試した範囲では、サーバーのOSやマシンスペック、ネットワーク環境を問わず、Windows上のiTunesでは音楽ファイルの再生は出来るが、動画の再生は出来なかった。
Mac OS X上のiTunesでは動画の再生も問題なく可能なので、WindowsのiTunesの何が悪いのかわからないが、この件に関してはもう少し調べる必要がありそうだ。
VPNを使わない方法
VPNにするのはセキュリティなどのリスクがあって怖い場合でも、ファイルの共有をしたいという事もあるだろう。
その場合、Orb (オーブ)というソフトもある。
OrbはWindowsのソフトで、自宅のPCにインストールしておけば、インターネットから自宅のPCにある音楽ファイルや動画などさまざまなファイルにアクセスできるようになるソフトだ。
Orbのすごいところは、クライアントはOSを問わずWebブラウザからアクセス可能で、iTunesなど特定のアプリケーションに依存せず、Windows Media、Flash、QuickTimeなどさまざまな形式に対応できる点だろう。
さまざまな形式で動画などを再生可能で、画質を落として動画を再生することリアルタイムで出来る。これにより、ネットワーク帯域の細い場所からのアクセスでも動画を楽しめる。
もちろん、音楽ファイルや動画だけではなく、普通の文書ファイルをダウンロードすることも出来るので、VPNを構築していないPCからも、インターネットに接続できるPCさえあれば、どこからでもさまざまなファイルにアクセスすることが出来る。
実際に使ってみると
最近は無線LANのアクセスポイントも増え、イーモバイルも順調にサービス地域を拡大し、ブロードバンド環境が充実しつつあり、このようなことが現実となりつつある。
個人的には、音楽ファイルや動画はiTunesで管理しているため、前述したように共有設定した動画をWindowsのiTunesで再生できない原因はよくわからないし、残念だが、少なくともMac OS XのiTunesなら問題なく再生できるので、動画の再生はMacで行っている。
Orbもいいが、やはり使い慣れたiTunesで動画や音楽ファイルの再生が出来た方が利便性は高い。しかし、iTunesの動画管理という面では、アメリカのテレビ番組に合わせたところが多いなど、使いにくい部分も多々あり、今後の改良が望まれる。
Windows Media PlayerもこのままiTunesに負けっ放しのはずはないし、今回は紹介していないが、便利なソフトは他にもたくさんある。
動画ファイルの管理という面では面倒な点も多いが、今後このような使われ方も普及すればより便利になるのは確実だ。
デジカメの画像管理という面では、AppleのApertureを使っているが、初めに130GB程度の画像を登録するのにかなり時間がかかった。
ネットワーク上のHDDにあるデータをマスターファイルに設定し、ローカルのHDDにはサムネイルなどを作成する仕組みだが、ネットワーク上にあることと、RAWの処理に時間がかかることから、130GBのサムネイル作成など、ファイル登録後の後処理に4日程度費やした。
この後処理が終われば、ネットワークがオフラインになっていても、ある程度の画質で、画像ファイルの管理が可能になる。
設定にもよるだろうが、サムネイルなどローカルに保存されるデータはオリジナルファイルの1/6程の21GB程度になった。これ自体、そこそこ大きなサイズだが、ノートパソコンで入らない量でもなく、オフラインでもある程度管理が可能なのは非常に便利だ。
そもそも画像管理ソフトで、Apertureを選ぶポイントとなったのは、ボールトというバックアップ機能があり、バックアップを自動化出来るからだ。
しかし、マスターファイルはネットワーク上のドライブを指定することが出来るが、ボールトのファイルを保存できるのはローカルのHDDのみという中途半端な仕様を、購入後に気づいた。だまされた気がするが、とりあえず将来のネットワーク上のHDDにボールト出来るようになるのを待ちたいとは思う。
問題も多い
このようなVPN用にデータ保存環境をつくる最大の問題の1つが、自宅などのサーバーとなるPCをどう構成するかだろう。
将来は、HDD増設が容易な家庭内メディアサーバー的な用途に適したPCが販売されるようになるだろうが、現時点でやろうと思うと、普通のデスクトップパソコンではうるさいし、消費電力も大きい。
ノートパソコンでやるにしても、外付けのHDDは結局3.5インチを使わざるを得なく、余ったノートパソコンがあるような人以外にはおすすめできない。
そして2つめの問題が、動画をどうやってPCで再生できるようにするかという点だ。
これはエンコードや編集など動画に関する知識や、将来どうなるかわからない動画フォーマットに関することも含まれており非常に微妙だ。さらに、エンコードに時間がかかりすぎるという最大の問題点も存在する。
知らない人も多いだろうが、MP3が世の中に登場した十数年前は、1曲MP3ファイルにするだけで1時間かかるなど、今では考えられない時間がかかっていた。その当時のHDD容量を考えると128kbpsでMP3ファイルにしたとしても、容量が足らなく、今のようなギガバイト単位のライブラリ構築など夢のまた夢だった。
まだまだ問題の多い動画などのネットワーク保存環境も数年後には、かなり改善することは確実だ。
今回の情報を参考に、著作権を侵害することなく、自分なりの環境構築をして楽しんでいただければ幸いだ。
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