このところ、70年代、80年代を代表する世界的な大物バンドがジョイントライヴで来日公演を行なうことが多い。とくにこの3月から4月は、TOTOとボズ・スキャッグスのロサンゼルス組、シカゴとヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのアメリカンロック組、そしてナイトレンジャーとファイアーハウスのハードロック組と、アメリカの大物ロックバンドが相次いでジョイントライヴを行なった。その中でも多くの観客を集めたのがTOTOとボズ・スキャッグスのジョイントライブだろう。
グッズ売り場も大混雑
3月のTOTOとボズ・スキャッグスのジョイントライヴは、直前にTOTOの活動停止が宣言されたこともあってソールド・アウトが続出。とくに最終日の3月31日の東京国際フォーラムは、異様な熱気に包まれているようだった。会場に入ってまず驚いたのは、グッズ売り場にできていた長蛇の列。人気アーティストのライヴは数多く見てきたが、これほど長い列は見たことがなかった。15分ほど並んでやっと売り場に入ってみると、Tシャツはすでにほとんどが売り切れ。あってもSサイズしか残っていないという。さすがにラストツアーとあって、コンサートグッズの入手のチャンスも最後だし、客層も30代以降が中心のようだから、“大人買い”をするファンも少なくなかったのだろう。
AORの名曲が目白押しのダンディなライヴ

シルク・ディグリーズのような往年のAORの名曲満載だったボズのライヴそんな熱気が渦巻く中、最初にステージに上がったのは“ミスターAOR”ことボズ・スキャッグスだ。90年代後半からは自身のルーツに近いブルースやR&Bに傾倒していたし、近年の来日公演でも渋いR&Bを聴かせていたボズだったが、今回は違った。TOTOとのジョイントということで、AORファンが多いことを意識したのだろう。「Lowdown」、「Jojo」と80年前後のAOR全盛期に放ったヒットソングから始まり、その後も「Miss Sun」や「Harbor Lights」、「We Are All Alone」、「Lido Shuffle」と続く。まさにAORコンピレーション盤のような選曲だ。TOTOのメンバーもボズのステージに参加して盛り上げてくれた。中盤からはキーボードのデヴィッド・ペイチが、そしてアンコールの「Breakdown Dead Ahead」ではスティーヴ・ルカサーが参加した。とくにルカサーは、登場するや否や客席の空気を一変させて総立ちにしてしまったし、ノリノリで印象的なあのリフを弾く姿にはやはり華があると感じられた。終始ダンディにキメたボズ・スキャッグスは、本当にカッコよかった。時折弾いてみせたギターも、相変わらず素晴らしかった。すごくうまいギターではないかもしれないが、すごく“いいギター”を弾くのだ。歌心があるからこそ、そんなギターが弾けるのだろう。そしてボズのヴォーカルも、30年前のレコードとなんら変わりなく、甘く艶やかだったのも驚きだった。“ミスターAOR”の呼び名にふさわしい貫禄を見せつけたライヴだった。
集大成的な内容のTOTOライヴ

今回のライヴに近い内容の『Falling In Between Live』前座がボズ・スキャッグスというなんともぜいたくなTOTOのライヴは、「Gypsy Train」からスタート。リリースされたばかりのライヴ盤『Falling In Between Live』に近い選曲で、いわば21世紀のTOTO集大成といった内容だ。中盤のキーボードソロで「99」や「Georgy Porgy」、「Child's Anthem」といった初期の曲をアレンジして聴かせてくれたところでは、昔からのファンの涙腺もかなり刺激したようだ。この日は特別に、3代目ヴォーカリストのジョセフ・ウィリアムズが参加したのもうれしいところ。「Pamela」や「Stop Loving You」はやはりジョセフの声がぴったりだと感じた。また、20年前のTOTO在籍時より太く、パワフルな声になっていたのも驚きだった。当時はライヴだと粗っぽかったジョセフだけれど、今回は完璧な出来だった。歌のよさ、曲のよさがよく伝わってくる。ひょっとしてジョセフが脱退しなかったら、今回のように活動停止に追い込まれることはなかったのかも、と思ってしまった。ジョセフの参加は、どの時代のTOTOファンにとってもうれしい事件だっただろうが、逆に現メンバー全員が参加しなかったのは悲しかった。ラストツアーということでデヴィッド・ペイチは復帰したものの、腕の怪我を理由に昨年かツアーに同行していないベーシストのマイク・ポーカロは今回も不参加。ついにポーカロ兄弟が一人もいないTOTOになってしまったのは本当に残念だった。アンコールでは「Hold The Line」、「Africa」と大ヒット曲を続け、最後にはボズ・スキャッグスも登場し、TOTOのライヴではおなじみのゴスペル調「With A Little Help From My Friends」でフィナーレを迎えた。
TOTOの復帰の可能性は?
こうしてTOTOの来日公演は終わってしまったわけだが、これが本当にラストツアーだったのだろうか。相変わらず演奏は完璧だったし、今回の客席の盛り上がりを見ればまだまだ人気はあるようだ。なにより最新作の「Falling In Between」の出来はすごくよかった。だから復帰を望む声も多い。しかし、実際その可能性はあるのかというと、それは難しいようだ。日本とヨーロッパではまだ人気のあるTOTOだが、本国アメリカではレコード会社との契約すら難しい状況に置かれている。それにこのところメンバーは次々とツアー不参加を表明していて、バンド内部に問題を抱えているとも言われている。現在の中心メンバーであるスティーヴ・ルカサーの興味も、ソロプロジェクトに向けられてしまっているようだ。そんな状況では、TOTOとしてこれまで同様に活動を続けるのは難しいだろう。とはいえ、TOTOを見られる可能性がまったくないわけではなさそうだ。これまでのように、バンドとしてレコーディングをして、ツアーをして、という活動を再開する可能性はおそらくゼロに近いだろう。しかし彼らは超一流のセッションミュージシャンだ。誰かのバックでメンバーの多くが顔を合わせることがあるだろう(実際、ジョセフ・ウィリアムズの次のソロアルバムにはルカサーやペイチ、スティーヴ・ポーカロなどが参加するという)し、ルカサー自身、同窓会的なライヴやツアーを行なう可能性もあると発言しているらしいから、期待して待っていてもよさそうだ。
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