16×16のLEDボタンを用いた不思議な電子楽器

16×16のボタン型のLEDが配置された不思議な電子楽器、TENORI-ONYAMAHAが5月12日に発売することを発表した電子楽器、「TENORI-ON(テノリオン)」。先日、大々的な記者発表会が行われたので行ってきたのですが、かなり不思議な電子楽器です。YAMAHAの社長いわく、「TENORI-ONはまだアーティストのいない楽器」とのこと。つまり、ギターやピアノ、トランペット、バイオリン、ドラム……など既存の楽器ではないため、まだ世の中にアーティスト=プレイヤーがいない、ということなのです。約20cm×20cmの正方形のマグネシウム合金のフレームを使ったこの楽器には、16×16の白いボタン型のLEDが配置されており、これを使って演奏するのです。そしてLEDであるだけに、これが光るわけですが、ボタンとなっている表面だけでなく、裏面にもLEDがあり、裏表が同時に光るので、演奏者のプレイをオーディエンスも光の形で見ることができるようになっています。まさに光と音のハーモニーという感じですが、TENORI-ONは「音楽の知識がなくても視覚的・直感的に作曲、演奏ができる」というのがウリの楽器でもあるのです。
メディアアーティストの岩井俊雄氏との共同開発

TENORI-ONのコンセプトから実際の仕様作りにも携わった岩井俊雄氏(左)とYAMAHAの開発担当者、西堀佑氏TENORI-ONを最初に見て感じたのは「MIBURI」の再来。そう、YAMAHAはさまざまな実験的楽器を作り出していますが、以前大きく話題になったのがMIBURIというもの。これは肩、ひざ、手首などにその動きを感知するセンサーを取り付け、ダンスをすると音楽が鳴るという不思議な楽器でした。もちろん、まったく違う楽器ではあるのですが、また不思議なものを出したという点で、似た雰囲気を感じたわけです。このTENORI-ONのコンセプトから設計の多くを担当したのは、メディアアーティストとして著名な岩井俊雄氏。岩井氏によると、そのルーツにあるのは、彼が学生時代に買って使った紙テープ式のオルゴールにあるといいます。楽譜ではなく、幾何学模様のようなパンチ孔で演奏できるオルゴールに最新の技術、ユーザーインターフェイスを組み合わせて作ったのが、TENORI-ONだ、というわけです。
イギリスでは2007年9月から先行販売

イギリスでは2007年9月から先行販売が行われている日本では5月12日からの発売であり、価格は121,000円とちょっと高めな値段設定。初年度発売予定数は1,000台とのことですから、それほど莫大なヒットを狙っているわけではないようです。海外でも同時期に発売されるようですが、実はイギリスにおいては2007年9月からテストマーケティングということで、先行販売を開始しているそうです。また2002年に岩井俊雄氏と共同開発を開始して以来、試作機をさまざまな展示会・見本市に出品しているので、これに関する報道を目にした人も多かったとは思います。すでにイギリスではDJ、ミュージシャンや先進的なユーザーによってライブやオンラインなどでさまざまなパフォーマンスが披露されているとのこと。確かにYouTubeなどを見ると、そうしたビデオを見ることができます。
基本は16ステップのステップシーケンサ
光と音でパフォーマンスするということは分かったけれど、実際どうやって操作するの?という人のために、DTMの視点から簡単に解説してみましょう。TENORI-ONにはさまざまな使い方はあるものの、そのもっとも基本になっているのがSCORE MODE
というものです。実は、これMIDIシーケンサでいうところの、16ステップのステップシーケンサなのです。そう16×16の縦軸が音程、横軸が時間を表しており、1小節分の演奏をこれで作れるというわけです。ドラムを選べばドラムマシンそのものという感じで使うことができるし、ピアノやベースなどを選べば、メロディーやベースラインを簡単に作ることができます。その操作は指でLEDのボタンを押すだけ。すると、ループ演奏してくれるので、適当にボタンを押すだけでも、それなりの演奏ができるというわけです。
左右5つずつのボタンでさまざまな設定を行う

左右に5つずつ用意されたボタンでさまざまな設定を行うTENORI-ONを見ると、左に5つ、右に5つのボタンが並んでいます。これらがTENRI-ONの演奏操作で重要な役割を担うのですが、これもなかなかうまくできています。具体的には左側一番上のボタンで音色、2番目で発音の長さ、3番目でオクターブを設定するようになっていますが、たとえば音色など、とっても分かりやすく、ユニークなユーザーインターフェイスになっているのです。これを押すと、LED上に縦・横それぞれ直線が現れ、LED上で指を動かすと、その場所で光の直線が交差するようになります。そして、その交差点が音色を表しており、「確か左上のほうにピアノ音色があった、右下のほうにはベース音色があった」というように音の配列を視覚的に覚えておくことができて、なかなか便利なのです。そのほかにもループポイントの設定やループスピードの設定、またテンポやトランスポーズの設定なども、これらのボタンを使って行えるようになっています。
6つのモードでさまざまなパフォーマンスを実現
一方、TENORI-ONにはステップシーケンサであるSCORE MODEだけでなくBOUNCE MODE
RANDOM MODE
PUSH MODE
DRAW MODE
SOLO MODE
という計6つのモードがあり、これによって、さまざまなパフォーマンスが実現できます。たとえばBOUNCE MODEは配置した音符から光が落ちていくというもので、落ちた光は下から跳ね返っていきます。またRANDOME MODEは配置した音符の間を光が飛び交うというもの。3点、4点と指定すると、その点の間を光が動くとともに音が鳴るわけです。またPUSH MODEは配置した音符の周りを光がだんだん明るく、大きくなりながら音が徐々に変わっていくもの、DRAW MODEはLEDボタンを押したり線や曲線を描いたりすると、その点、線、曲線が繰り返し再生されます。そしてSOLO MODEはLEDボタンを押している間は音が繰り返し鳴るというもので、音が繰り返す間隔を買えることもできるようになっています。
音源はYAMAHAのAWM2を搭載し、サンプリングも可能
ところで、TENORI-ONを音源として考えると、実はごく普通の電子楽器であることがわかります。そうYAMAHAとしてもっともポピュラーな音源、AWM2を搭載しているのです。ご存知の方も多いと思いますがAWM2はYAMAHAのPCM音源であり、ピアノ、バイオリン、トランペット……といったサンプリング音色を鳴らすことができるというものです。プリセット音色数はノーマル音色239、ドラム音色14キットの計253音色を搭載。またエフェクトはリバーブ10タイプとコラース5タイプの2系統を搭載しており、最大同時発音数32音というスペックになっています。ただし、これは単なるAWM2音源ではなく、サンプリングにも対応しているのが大きな特徴です。つまりAWM2音源の音色数をユーザーが増やすことが可能で、増やせるのは3音色まで。また1音色につき、0.97秒以内の音を最大で16種類まで登録できるので、かなりいろいろな使い方ができそうです。MIDIの入出力も装備する

TENRI-ONに搭載されたMIDI端子を利用して外部機器とのやりとりも可能TENORI-ONにはMIDI端子も装備されています。MINI-DIN端子に付属ケーブルを使ってMIDI IN/MIDI OUTに変換して使うのですが、MIDI INにおいては前述のAWM2音源モジュールとして使えるわけです。一方、MIDI OUTはTENORI-ONでの演奏をそのまま外部に出力する形となります。TENORI-ONにはレイヤーという概念があり、これはほぼMIDIのチャンネルに相当するものです。したがってレイヤー1でドラム、レイヤー2でベース、レイヤー3でギター……というようにデータを作成し、それをMIDIで出力して、外部音源を鳴らすことが可能というわけなのです。
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