今回は独立レーベル立ち上げ後初の新作発表となったジャズ・ジャイアンツ、マッコイ・タイナーの新譜『McCoy Tyner Quartet [Live] 』をレビュー!
レギュラーカルテットで伝説最終章への船出?

Mccoy Tyner Quartet『McCoy Tyner Quartet』
ジャズシーンを牽引してきた巨匠、マッコイ・タイナーが自主レーベルを設立、その第一作が本作だ。ジョー・ロバーノ(sx)、クリスチャン・マクブライド(b)、ジェフ・ワッツ(ds)というメンバーはマッコイにとって盟友といってもいいメンバー。新曲はないが、力強い音楽空間が繰り広げられている。
1. Walk Spirit, Talk Spirit
2. Mellow Minor
3. Sama Layuca
4. Passion Dance
5. Search for Peace
6. Blues on the Corner
7. For All We Know
マッコイ・タイナー。往年のジャズファンには説明不要のジャズ・ジャイアンツであるが、ここではまずざっと彼の経歴について触れておこう。
1938年生まれの彼は、ジャズ黄金時代の中心といってもいい位置で活躍したピアニストだ。その舞台は何といってもジョン・コルトレーンのカルテット。ジミー・ギャリソン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds)と共にコルトレーン「黄金のカルテット」といわれる時代を作った。
『バラード』『至上の愛』『アセンション』など、多くの作品に参加し、新たなスタイルを確立。音楽史的に見ても、彼が開拓したピアノスタイルはビル・エヴァンスのそれと並んで非常に重要と言われており、今なお、これらの作品におけるピアノプレイは若手ピアニストたちの「上級編教科書」として機能している。
60年代以降のいわゆるフリー・ジャズ・ムーヴメントには冷淡な態度を貫き通し、ブルーノートレコードから『ザ・リアル・マッコイ』などといったストレート・アヘッドなアルバムを発表した。70年代にはソニー・フォーチュン(sx)、カルヴィン・ヒル(b)、アル・ムザーン(ds)とともにレギュラー・カルテットを編成しマイルストーン・レコードに移籍。名作『サハラ』を発表し、72年には初の来日公演も行った。
と、彼の足跡をたどってみたが、多くの音楽ファンにとって、彼の名前は「コルトレーンバンドでのマッコイ・タイナー」の時点でとどまっている、というのが現状であろう。 その後も、様々なレーベルから作品を発表。御年70を迎える彼だが、自主レーベルを立ち上げて初回作となる本作を聴くことで、彼の音楽史の最終章を占うことができるだろう。
では、『McCoy Tyner Quartet』を聴く!
演奏はパワフルかつ創造性にもあふれている。あとは・・・
今作は2006年末、カリフォルニアで行われたライブレコーディングであり、新曲は一曲もない。しかし私は逆に、そのことにマッコイが新レーベルでの活動にかける意気込みを感じる。というのは、演奏そのものが実に高い緊張感のなかで行われているからだ。ロバーノは吹きまくっている。ちっとも遠慮せず、マッコイの複雑な和声が作り出す空間を縦横無尽にかけめぐっている。マックブライドは全体的におとなしいが、しっかりとリズムの骨格のキープを担っている。その分、ワッツのドラムは非常にユーモアに富んだプレイが聞かれる。
何より、マッコイ・タイナーのピアノプレイの「新鮮さ」には驚きだ。私の音楽理論知識では確かなことはいえないけれど、ここには確かな「新しさ」を感じることができる。確かなことは、この人はまだまだ現役ばりばりであり、過去の遺産で飯を食っている同世代のアメリカ人ピアニストとはまったく違う、ということである。
ちょうどこの記事をアップする11月上旬、東京ブルーノートにマッコイが来ている。私は仕事の都合があり会場に足を運べないのだが、機会に恵まれた人はぜひ、彼の「今」に触れてほしいと思う。ライブは水物なので確かなことはどこにもないが、後悔しないことだけは確かだ、と保証したいと思う。
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