毎年3月下旬から4月上旬に行われる宝塚音楽学校入学試験。今年もその時期がやってきました。
合格発表の映像は毎年ニュースで流れ、タカラジェンヌになりたい少女たちを追ったドキュメンタリー番組なども放送され、宝塚をご存知でない方も、その難関度はおわかりでしょう。
タカラジェンヌ=宝塚歌劇団生徒になるための学び舎、宝塚音楽学校。
それはどんな学校なのか…?をご紹介しましょう。
宝塚音楽学校生の年齢と人数
宝塚音楽学校入学試験を受けられるのは、その春中学校を卒業した人から、高校を卒業した人まで。
よって一学年に、中卒、高1中退、高2中退、高卒で入学した人がいて、同じ期(学年)でも年齢の幅があります。
女優として活躍中の元タカラジェンヌ、黒木 瞳さん、涼風真世さん、真矢みきさんは、入学した際の年齢が違うため、同期生(67期生)であっても、年齢が違うわけです。
一年目を予科生、二年目を本科生と呼び、2年間の修業年数。
一学年の人数は、その年によって合格者数が違うため異なりますが、約40名~50名。
常に、約80名~100名の生徒が学んでいるということです。
授業内容
舞踊
【バレエ】【モダンダンス】【タップ】【日本舞踊】
音楽
【声楽(クラシック】【ポピュラー】【コールユーブンゲン】【合唱】【楽典】【音楽史】【器楽(ピアノ・三味線・琴より選択)】
演劇
【演劇】【狂言】
教養
【英会話】【茶道】【一般教養】
ほとんどが舞台に立つ上で必要な実技ですが、譜面を理解するための【楽典】や、礼儀作法を学ぶ【茶道】も長年教えられてきました。
比較的新しい授業が【英会話】。歌劇団に入団すれば、海外公演があったり、海外のスタッフに振付を受けたりすることもあります。また、英語の歌詞の歌を歌う場合も多く、新しく授業として取り入れられました。
予科生は、上記のすべてを習いますが、本科生になると【楽典】【音楽史】【狂言】【茶道】はなく、その分、舞踊全般、【声楽(クラシック】【ポピュラー】【演劇】など、舞台に最も必要な授業の時間が増えます。
予科生、本科生はそれぞれ、Aクラス、Bクラスの二つに分かれています。Aクラス、Bクラス別々の授業もあれば、合同の授業もあります。
授業1コマは80分。休みは日曜日のみで、月曜日から土曜日までみっちり授業が行われています。
お昼休み50分を挟み、18:30まで授業がある日もあります。
授業から授業までの休み時間はわずか10分。レオタードや着物に着替えたり、教室間の移動も多く、ゆっくりする間はありません。
舞台に立つようになってからの早替わりは、この時期から訓練されているようなものです。
例えば…こんな感じ
9:00~10:20
A 声楽
B モダンダンス
10:30~11:50
A モダンダンス
B 声楽
お昼休み
12:40~14:00
A 日本舞踊
B ピアノ・琴・三味線
14:10~15:30
A ピアノ・琴・三味線
B 日本舞踊
15:40~17:00
演劇
17:10~18:30
バレエ
また授業の一環として、宝塚大劇場の公演を観る時間もあります。
尚、様々なイベントに参加したり、遠足や修学旅行もあります。
講師
約50名の講師がいます。
それぞれの科目に専門の先生が多数いる他、宝塚歌劇団の演出家や振付家、作曲家も授業を行っています。
試験
前期・後期の二期制の下、期末試験をはじめ各科目で行われます。そして試験による成績は、様々なところに反映されます。 成績上位2名ずつが各クラスの委員に選ばれたり、文化祭や校内発表会の配役決めの参考になったり。
本科の最終試験は、初舞台時の香盤にそのまま反映されます。
教室
鏡張り、ピアノや黒板がある、畳、所作板が張ってある、茶室…など各科目に適した大小様々な教室がいくつもあります。
講堂でも、朝礼や式典の他、A・B合同の授業や、文化祭の練習が行われます。
着替えたりお弁当を食べる場所として、予科ルーム、本科ルームがあります。この部屋のみそれぞれの部屋であり、本科生であっても予科ルームに入ることはありません。
高校卒業資格
平成15年度より、中卒や高校中退入学者が、高等学校卒業資格を修得できる単位制の制度が始まりました。
高2中退の生徒なら1年間、高1中退の生徒なら2年間なので、音楽学校在校中に単位が修得できます。
中卒の生徒にいたっては、歌劇団に在籍しながら単位を修得します。
舞台に必要な多くの授業を受けつつ高校卒業資格を修得するのは大変でしょうが、高校卒業が当たり前となった時代、頑張って両立させて欲しいものです。
また歌劇団退団後、新しい職業に就く人も大勢います。この資格がきっと役立つことでしょうね。
制服
冬服――白の長袖ブラウス、グレーのジャンパースカート、赤の蝶ネクタイ、グレーのボレロ、グレーの制帽、寒い日はグレーのコート 夏服――白の半袖ブラウス、グレーのジャンパースカート、赤の蝶ネクタイ
グレーのジャンパースカートは、夏冬兼用です。
通学靴は、予科生は黒のローファー、本科生は黒のヒール。
靴下は、予科生は白の三つ折りソックス、本科生はストッキングなど。
髪型は、予科生の長い髪の人は額を出した三つ編み(ゴムの色は黒か茶色)。短い人は額に髪が垂れないように。
本科生は、宝塚音楽学校の生徒としてふさわしいものであれば比較的自由。髪飾りなども構いません。
そして、予科、本科とも、髪を染めることは許されません。
授業の際の稽古着は、レオタード、浴衣や着物、シューズ各種、他付属品。
校章のロゴが入ったジャージの上下もあります。
また、式典の際には、緑の袴に黒紋付か柄物の着物を着ます。この緑の袴や黒紋付は、劇団に入団してからも使います。
寮
自宅から通える生徒以外は、全員、すみれ寮に入ります。
一人暮らしや親戚などの家から通うことは許されません。
礼儀作法
「まるで軍隊のよう…」。長年、宝塚音楽学校で教えられる礼儀作法や言葉使い、規律の厳しさはそんな風に言われています。事実、厳しいです。
その礼儀作法や規律のほとんどは、学校の先生が教えるのではなく、本科生が予科生に指導し、それが代々受け継がれているものもあれば、時代と共に変化してゆくものもあります。
「ベルサイユのばら」初演頃から厳しさがどんどん増したと言われ、たぶん私が在校していた時代はそのピークだったかもしれません。
昨今それが幾分緩やかになり、本科生、予科生とも以前より授業に専念できるようになったのではないでしょうか。
どんな規則があり、どんな風に厳しいのか……? それは詳しくお話できません。なぜなら、その年によって違うためと、「指導の内容を、たとえ親にも話してはいけない」と教えられてきたからです。
ただ、卒業生らが笑い話(時が過ぎればみんな笑い話になる!)として話してもいますし、宝塚ファンの方々が目にした光景から感じることも多々あるでしょうね。
道や廊下を歩く時、どちら側をどのようにして歩くのか。
挨拶は何と言うのか、または目礼だけなのかなど時間帯によってそれぞれ違う。
制服や髪型などに少しも乱れがあってはならない。etc…
そうした規則を少しでも間違えると本科生に注意されます。
有名なのは、お掃除。予科生は一年間、毎朝1時間半ほどかけて、各教室、講堂からトイレに至るまでを、各教室の各分担に分かれ掃除します。
鏡やピアノには指紋一つなく、裸足や白足袋で踊る床はいつもピカピカ。綿棒やガムテープ、絵筆までを掃除道具として使い、ホコリ一つありません。
これも、個々の教室の各分担の本科生から指導され、掃除の出来はチェックされたものです。
「舞台に立つために宝塚音楽学校に入ったのに、なぜ、このような作法や規則が必要なの…?」。そう思われる方も多いでしょうね。正直私も思いました。「舞台に立つための基礎を学ぶと言うより、叱られるために入学したような気がする…」なんてね。
でもそれらはすべて、歌劇団に入団してから役立つものばかり。
例えば……
「本科生に呼ばれたため、慌てて予科ルームの外(廊下)に出た。その時、制服のボタンを一つかけ忘れていた。」……当然、本科生に注意を受けます。
でも、どんなに急いでいても、きちんと制服を着るということは、後に、どんなに早替わりでも、きちんと衣装を着るという練習になっているのです。
また“少々のことではへこたれないぞ!”という心身の強さを養う。
“自分のためを思って叱ってくれる”ことへの感謝の思いや、目上の人に対する尊敬の思いを持つ。
舞台人としてだけではなく、一社会人としても立派な女性になるための修行。
毎朝のお掃除にしても、入団後に役立つもの。
誰一人として手を抜くことなくするお掃除と、大勢で一つの作品を作る舞台。
自分が使う教室をきれいにする気持ちと、衣装や小道具を大切に扱う気持ちなどはいっしょ。
指導する本科生も大変ですが、予科生の一年間は慣れないことばかりで本当に大変です。
でも彼女たちには、やがて宝塚の舞台に立つという大きな目標があります。だから…耐えられるのです。
「タカラジェンヌになりたい!」という多くの少女たちの中から選ばれ、その夢を実現できる切符を手にした宝塚音楽学校の生徒たち。
多くの授業、厳しく緊張した日々の中でも、彼女たちは純粋にひたむきに頑張り、光り輝いています。
3月21日より始まる月組公演『ME AND MY GIRL』で、先日、宝塚音楽学校を卒業したばかりの第94期生が初舞台を踏みます。
この日のために、そしてこれからのために、二年間精進してきた彼女たちに、温かい拍手と応援をよろしくお願いいたします。
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